大阪大学 2019年度 世界史過去問

世界史

Ⅰ 古典期(前5~前4世紀頃)アテネの民会決議碑文には,「評議会と民会によって決議された」との定型文が残されている。この時期のアテネの政体は民主政であり,市民は,財産の多寡にかかわらず,民会において発言し一票を投ずることができた。これについて以下の問1~問4に答えなさい。

問1
 古典期アテネでは,自由なポリス市民に対して,専制君主の支配下にあるオリエントの民衆を隷属的とみなし,蔑視する風潮がみられた。そのような発想のきっかけとなったオリエントの国家との戦争の名前を答えなさい。

問2
 オリエントとギリシアの対比は,その後のヨーロッパでも影響力を持ち続けた。図1は1822年にパリで発売されたカレンダーであるが,その上部を飾る二つの戦闘図も,このモチーフを踏襲している。図1が発売された政治的・文化的背景について説明しなさい(70字程度)。

説明: V721W1@@01

問3
 古典期アテネと近現代西ヨーロッパの民主政を,参政権の範囲の変遷と,その行使方法に着目して比較しなさい(160字程度)。

問4
 ローマでもSPQR(元老院とローマの人民)の語が,公文書や貨幣に記されていた。前3世紀から後3世紀までのローマの国家体制の変遷を説明しなさい(100字程度)。

Ⅱ 以下の文章を読み,問1~問3に答えなさい。

 定着農業が営まれる世界では,土地は,富の主要な源泉だった。このため,各地を支配する政権は,土地から生まれた財貨を手に入れるために意を注ぐとともに,労働力や土地の配分に対しても積極的に関与した。(ⅰ)・(ⅱ)はいずれも為政者により発布された命令文を示したものである。

(ⅰ)
 毎年春には,各地の寒暖に応じて,適当な時期に農作業を開始させよ。春から秋にかけ,15歳以上の男はみな野良に出て働くこと。[ (ア) ]の季節には,15歳以上の女は[ (ア) ]に精を出せ。10月には,地方官は自らの任地における教化の成果を以て人事評価を受けよ。(中略)このようにして土地は無駄なく耕作され,あぶれ者は皆無となるようにせよ。男はすべて18歳で農地を支給され,税を納めさせること。20歳で兵役に応じ,60歳で役務より免除され,66歳で(政府から与えられた)農地を返納し,納税の義務を免れるようにさせよ。(後略)

(ⅱ)

1.朕は望む。朕の入り用にあてるために設立された[ (イ) ]は,朕以外のいかなる人間でもなく,すべて朕に役立つことのみをその務めとすることを。

2.朕の[ (イ) ]の民を十分に慈しみ,何人たりとも彼らを窮乏に追い込まないこと。

3.朕の[ (イ) ]の管理者は,[ (イ) ]の民を私用で役使しないこと。彼らに仕事をするよう駆り立てたり,木を切るなどの作業を強制したりしないこと。酒瓶(buticula)や野菜,果物,鶏や卵以外,管理者は馬であれ牛であれ豚であれ羊であれ,民からいかなる付け届けも受けないこと。(後略)

 (ⅰ)は6世紀の[ A ]で,(ⅱ)は8世紀の[ B ]で各々出されたものであり,いずれもそれぞれの国家体制を反映している。(ⅰ)で述べられる土地制度は[ (ウ) ]制,(ⅱ)のばあいは[ (イ) ]制として知られる。
 このような為政者の発令した諸規定は,土地の保有や分配,あるいは税負担にかかわる「制度」の一部分として,後の時代における政策や国家体制を何らかのかたちで左右するとともに,現在にいたるまで各地の法・経済のあり方に深い刻印を残すこととなった。

問1
 空欄[ (ア) ]~[ (ウ) ]に入れるべき語を以下の(1)~(10)よりそれぞれ一つずつ選び,記号で答えなさい。

(1) 荘園   (2) 天朝田畝   (3) エンコミエンダ
(4) 均田   (5) イクター   (6) 絹生産
(7) 綿花栽培   (8) 稲 作   (9) コルホーズ
(10) 強制栽培

問2
 空欄[ (ウ) ]の土地制度が導入された背景,および後代へ与えた影響について,論じなさい(150字程度)。

問3
 空欄[ (イ) ]が[ B ]において形成された背景,当時の政治制度全般との関係について,以下の語句を使って論じなさい(200字程度)。

イスラム教徒   領主   軍事

Ⅲ 次の図2は「とても気高く忠誠心に篤いメキシコ市」と題された屏風で,1690年頃にメキシコで作製された。屏風はもともとアジアから輸入された商品だったが,17世紀後半にはメキシコの景観や歴史をモチーフとした屏風が,現地で作製されるようになっていた。また,コロンビアのトゥンハ市にある教会内部の壁面には,17世紀後半に作製された伊万里焼が装飾の一部としてはめこまれている。これらに関連する問1と問2に答えなさい。

説明: V721W1@@02

問1
 スペインのセビーリャにあるインディアス総文書館の税関記録には,1660年代以降,台湾からマニラへ寄港した商船の積載品の一部として,茶壺や大皿,碗といった日本製磁器に関する情報が記されている。1660年代から1680年代初頭に中南米で日本製磁器が流通した歴史的背景を,以下の語句を使って論じなさい(150字程度)。

台湾   鄭氏   マニラ

問2
 この屏風の題名には,植民地生まれのスペイン人が故郷に対して抱いた愛着や誇りだけでなく,宗主国スペインとの複雑な関係が暗示されている。このような人々は,18世紀から19世紀初頭にかけてヨーロッパで生まれた思想や欧米各地で起きた革命に刺激されながら,スペインに対して自らの権利拡大を要求する運動を展開した。そのような革命の連鎖について,人物・思想に触れつつ具体的に論じなさい(150字程度)。

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