学校の授業は当然、教科書内容を進め、知識を理解するためにあります。
しかし、学校の授業には「雑談」が付き物です。
本来の授業には一切必要がない、言うなれば「無駄な時間」が存在します。
授業を受ける生徒・児童はこの雑談が楽しみだったりします。
雑談をさせるために話題を振ったり、ネタを仕込んだり。
一方、授業を準備する側の教師も、実は雑談に意識を傾けています。
教材研究の一貫と捉えている人もいるのです。
授業の本質とはかけ離れた「雑談」について考えていこうと思います。
学校の授業に雑談は必要なのか?

結論から言うと、間違いなく必要です。
その理由を考えていきましょう。
最後まで集中力が続かない

授業の時間は1限あたり
- 小学校 ー 45分
- 中高 ー 50〜60分
- 大学 ー 90分
ほどが一般的な時間でしょうか。
小学校から順に、時間がのびていっているのがわかります。
では、小学生が45分、中学生が50分集中力を保ち続け、熱心に頭を使えるでしょうか。
僕は、大人でも難しいと思います。
僕も教師としてご飯を食べてますから、60分でも90分でも授業をし続けることはできます。
他の先生もそうでしょう。
しかし、研修会やセミナーに行こうものなら、
「よく生徒は毎日5時間も6時間も授業を聞いていられるな」
と思わされます。
人の話を聞くことは、とてもエネルギーを使うことなのです。
もし、淡々と教科書を読み、板書を写して45分が過ぎたなら、その時間の三分の一しか実のある時間になっていないでしょう。
ただでさえ、現代人は集中力が落ちているといいますから、子どもに至っては集中できなくて当然とも言えます。
そこで、授業時間をより効率的に過ごすために、「小休止」が必要な訳です。
興味関心の土台とする

学校の教科書はページ数や内容の制限があり、良くも悪くもスッキリまとまっています。
そのため、学習内容をただの知識として捉え、なにか雑学のようなものに堕としてしまいがちです。
そこで、先生の「雑談」が活きます。
先生の実体験や社会の何に役立っているか、あるいは共通点などを先生なりの視点で紹介してあげれば、クラスの数人は少なくとも興味関心を抱くでしょう。
無味乾燥な知識に、実学の息吹を吹き込むのは、我々授業者の使命でもありますからね。
「今の社会」を伝える

これは私見なのですが、教師の多くは、生徒を「大人」として過大評価している節があるように思います。
もちろん、彼らの人間性や立場は尊重してあげないといけませんが、一方で「まだまだ子どもだ」という意識は絶対に必要です。
その最たる例が、ニュースに疎いということです。
大人であれば、これくらい知っていて当然。最近このニュースの話題が多いな。とアンテナを張っていることでも、子どもたちには全く届いていないこともあります。
特に近年は、YouTubeやSNS、スマホゲームに没頭しており、テレビを見ないという子も多いです。新聞を読んでいる子なんてクラスに一人いるかどうか。インターネット社会は情報があふれていますが、自分から情報を得ようとしなければ触れられませんからね。
そこで、このニュースは知っておいた方がいい、いまこんな動きが社会で起こっているんだ、ということを先生の口から伝えてあげることは非常に有益なことです。
僕は、社会科が専門なので、授業内容に関連のあるニュースはよく紹介します。また、授業で紹介するためにニュースを調べます。
社会科はニュースの内容がダイレクトに授業に関わってきますので、比較的組み込みやすいですが、他の教科でも工夫次第で取り入れることは十分に可能だと思います。
信頼関係の構築【最重要】

実は、これが一番大事な要素だと思っています。
色々な考えがあるのを承知で言いますが、授業は「生き物」です。
同じ授業は二度とできませんし、いくら準備したって、その時の生徒の様子や自分の体調でも大きく変わります。
では、何が授業を安定させてくれるのか、良い授業へと導いてくれるのかというと
生徒と教師の「信頼関係」
だと、僕は考えています。
教師が生徒を信じるのは簡単です。
自分の心がけ次第ですからね。
問題は、生徒にいかに信用されるか。
ここでの信用や信頼は、
「この人の話なら聞いてもいい」
や
「この人のやることは面白い」
と、思わせることにあると思います。
大人でもそうですが、聞く価値のない話、やる価値の見出せない活動は積極的にしません。
また、同じ内容の話でも、言う人によって感じ方が変わります。
基礎トレーニングの重要性をオリンピック選手が語るのと、無名な選手が語るのでは、同じ文言でも説得力が違いますからね。
ですので、生徒が何に興味をもっているかをうまく汲み取り、惹きつける話をする。
これが授業をうまくやる秘訣になるのです。
雑談は楽しい!でもこれはNG

雑談の有用性を上で説いてきましたが、あくまで学校の授業であることは忘れてはいけません。
話してはいけないことや避けた方がいい話題ももちろんあります。
- 下ネタ(絶対NG)
- 生徒いじり(絶対NG)
- 同僚批判
- 政治
- 宗教
他にもありますが、おおまかに5つ挙げておきました。どれも当たり前のことですが、一つ一つ見ていきましょう。
下ネタ(絶対NG)
信じられないことに、授業中に下ネタを安易に使う先生がいます。
どういう思考をしているのかわかりませんが、雑談に下ネタは絶対NGです。
とはいえ、性に関することを言ってはいけないという意味ではありません。
中高生は多感な時期ですので、性に興味関心が強い子も出てきます。
生殖に関することが、歴史上どう捉えられてきたのか、偉人はどう考えてきたのか、について紹介することは決して悪いことではありません。
臭いものにフタをするように扱うのもどうかと思いますが、扱いは慎重にしなければなりません。
生徒いじり(絶対NG)
意外とやってしまいがちなのが生徒いじり。
ノリのいい子なんかだと、つい甘えてしまうことがあるのですが、できるだけしない方がいいです。
特に、身体的特徴や成績、素行は触れないのが無難でしょう。
どうしても悪い例えを出したいなら、自分を犠牲にすべきです。
同僚批判
教師同士の関係性をネタにする人もよくいます。
あの先生の意外な一面や教師同士の仲の良さなんかを話してあげれば、生徒から先生への信頼は増すと思いますが、批判をしてしまうとこれが大きく崩れます。
同僚批判は負のループで、自分が他者を批判すれば、他者が自分の批判をしていると思った方がいいです。
結局は、自分の首を締めることになるのでよほどのことがなければしないに限ります。
政治
これがなかなか難しい問題です。
教師も人間ですから、一人一人の信条があるでしょう。
様々な問題意識もあると思います。
しかし、先にも述べましたが、子どもは未完成です。
教師の発言をそのまま受け入れてしまう可能性もあります。
そこで政治的に偏った発言を繰り返してしまえば、そのように染まってしまう可能性があります。
では、政治の話はすべてNGなのでしょうか。
これも人によると思いますが、僕はそうは思いません。
〇〇党に投票しろ、とか〇〇はダメだ、のような押し付けは絶対NGですが、
根拠のある批判や、これからの社会を生きる生徒に対しての問題提起などであれば容認できる内容ではないかと思います。
ただし、話題は慎重に選びましょう。
嫌韓や反米、反政府に大幅に偏らない思慮深さは必要です。
宗教
これもなかなかに難しいですね。
公立の学校は宗教を前提として設立することはできませんし、カルト的なリスクを感じる人もいます。
新興宗教の勧誘なんかはもってのほかですが、近年は外国人観光客も増えていることですし、他者理解の視点から話を出すことはできます。
特に、イスラーム教への理解は重要な要素ですし、日本の当たり前がそうでない国もあることを知るのは良い勉強になります。
政治との関係もあるので難しいですが、他者批判をしない前提で紹介することは有効な話題だと思います。
最後に

授業の核はあくまで教科書内容なのは変わりないですが、教師の自分らしさや個性を積極的に出すためにも、雑談を取り入れることはとても重要です。
生徒の目を開かせる良い話を考えていきましょう。